いきもの調査

イシガメ繁殖計画2023結果報告

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我が家ではニホンイシガメを屋外飼育しています。みんな近所で捕まえたカメ達。飼育を始めて今年で6年目。カメの寿命からすれば、まだまだ飼い始めたばかりです。

2022年のゴールデンウィークにはカメの住まいをリニューアル。産卵場所を整備しました。(カメの住まいのリニューアルについてはこちらこちらこちら

カメ達は、新居で仲良く暮らしています。

2023年1月のカメ達。ニホンイシガメは寒さに強く真冬でも活動します。「デカ子」大人気。

そして今年の6月2日、最年長の「デカ子」が、6月5日にはモテメスの「フジ子」が、ついに産卵してくれました。(我が家で初の産卵についてはこちら

続々と産卵

「デカ子」と「フジ子」は、6月初旬の初回以降、6月下旬~7月初旬に2回目、8月初旬に3回目と、2匹それぞれが3回ずつ計6回産卵してくれました。

また、それ以外に若い「バナ奈」が、7月中旬に1回産卵。2023年、我が家では計7回の産卵が行われました。

お母さん代表「デカ子」

産卵期間中は、飼育エリアをトレイルカメラでタイムラプス撮影。産卵場所を特定して、卵を回収しました。

撮影に使用したトレイルカメラ

撮影された映像は、こんな感じです。

2023年6月27日 デカ子2回目の産卵の様子

この時の産卵場所はこちら。結構上手に埋めるものですね。さすがはベテラン「デカ子」。

6月27日の産卵場所。

卵は約1ヶ月後、7月30日に回収しました。生まれたての卵と違って、少し膨らんでフワフワした手触りでした。

6月27日に産み落とされた卵。数は9個でした。

今シーズンに生まれた卵は、合計47個。このうち有精卵は45個でした。
卵は全て掘り出し、孵化するまで冷温庫で温度管理しました。

ちなみに、カメの卵については、こちらの文献(クサガメの卵巣周期について)が参考になります。文献はクサガメに関する内容ですが、我が家のカメたちの様子をみると、イシガメも同じ雰囲気のように感じます。

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痛恨のミスで事故発生

ニホンイシガメは、卵の周りの温度によって、生まれる子ガメの性別が決定するそうです。(参考文献はこちら

そのため、私は冷温庫を2つ用意し、一方を高温(29~32℃)に、もう一方を低温(25~28℃)に設定して、「デカ子」と「フジ子」の1回目の卵をそれぞれ半々に分け、管理していました。

高めの温度管理に使用した冷温庫。上に乗っている温度計で2つの冷温庫を監視。

ある日、冷温庫の扉の内側についた水滴が気になり、タオルで拭いたところ、扉の外側にある温度設定部に指が触れてしまい、設定温度が急上昇。それに気付かず20分程放置して、大事な卵を7個も死なせてしまいました。「デカ子」「フジ子」、申し訳ありません。

同じミスを起こさないよう、扉の温度設定部を段ボールで保護。はじめからこうしておけば、悲しいことにはならなかったのに・・・。

温度設定を変更する時にだけ、段ボールをめくって操作します。

もし、同じタイプの冷温庫で爬虫類等の卵を管理される場合は、くれぐれもご注意ください。

ついに誕生!

7月23日、「デカ子」が最初に産んだ卵が、ついに孵化しました!

我が家で生まれた初めての子ガメ。本当にうれしかったな~。・・・亡くなった卵達も、ちゃんと孵化したはずだったのに・・・。

他の卵も次々と孵化。

みんな、ちゃんと生まれてきます。

生まれた子ガメ達は、タッパーの中でそのまま待機。しばらくは水苔に潜っていますが、お腹のヨークサックが吸収されたころ、水苔から這い出してきます。

私の場合、ここからはしばらく個別飼育に。ネット通販で購入したプラ容器に1匹ずつ入れて、朝夕2回の水替え。

配合飼料を食べるようになって、ある程度成長したら、集団生活に移行します。

集団生活といっても、親ガメの住まいに子ガメを放り込むわけにはいきません。共食いしてしまったら大変です。そこで、新たに子ガメ専用のお家を用意することにしました。

まずは井戸水を確保

カメの飼育で、まず重要なのは水。我が家では、親ガメには水道水を使っていて、今のところ特に問題はありません。でも子ガメはもう少しデリケートに考えた方が良さそうです。

もともと、災害対策として井戸が欲しいと思っていたので、ここで思い切って専門の業者に依頼して庭を掘削。23m掘ったところで、ちゃんと水が出てきました。

地表までは電動のポンプで汲み上げます。

蛇口を捻るとポンプが動いて給水。子ガメの飼育水はホースで送ります。

ちなみに、地表よりも少し下までは自噴するので、停電しても水が得られるようになりました。

タナゴ釣りには、毎回この水を汲んで持っていきます。

厚生労働省「飲用井戸等衛生対策要領」に基づく水質検査の結果にも問題なし。災害対策として申し分ありません。もちろん子ガメにも安全・安心です。

子ガメハウスを整備

次は子ガメのお家。容量と価格のバランスから、親ガメ達と同じトロ舟「キヴォトス180」を選びました。ホールソーで穴を開けて、塩ビ管・水栓ソケット・ソケットバルブ・ゴムパッキン・防虫目皿などを組み合わせてオーバーフローの取り付け完了。L字部分の角度を変えることで、ある程度水深を調節できます。

これで、雨水が入っても一定の水量が維持されるので、ちゃんと日が当たる場所に設置ができます。やはりカメの健康維持において、日光の効果は絶大です。

次は濾過。外付けの濾過装置は使用しませんが、かわりに浄化槽用のブロワーでエアーを送り、投げ込み式フィルター「水作フラワーDX」で簡単に濾過します。水が動くだけで、水質の維持には効果があります。

底には「ろかジャリ8L」を1袋いれました。

陸地は、ダイソーのワイヤーネット(62cm×29.5cm)や人工芝と、ホームセンターで買ったウッドパネル(人工木)などを組み合わせて作りました。重量不足ですが、子ガメならば動かされる事もないでしょう。

仕上げに、近所の水路でアナカリス、マツモ、スジエビ、シナヌマエビ、カワニナ、シマドジョウ、ヨシノボリなどを確保して投入。水質の維持に協力してもらいます。

近所で確保したシナヌマエビなど

そして、子ガメ達が入居。

日中の給餌は、オートフィーダーに任せます。

左上の黒い装置がオートフィーダー。設定した時間にエサを落とします。

ホースで井戸水を注ぎ、オーバーフローさせることで水を入れ替えています。いまのところ、水質に問題はなさそう。少なくともシナヌマエビは順調に繁殖していますし、水質に敏感なスジエビも元気に暮らしています。

2023年の結果は?

今年行われた産卵7回分の結果をまとめると、以下のとおりです。

有精卵45個のうち無事孵化したのは38個。私のミスで死なせてしまった7個以外は、全て無事に孵化しました。改めてミスが悔やまれます。

孵化までの日数は、高温管理で46日ほど、低温管理では53日ほどでした。この値は、だいたい文献と一致しています。安価な冷温庫での温度管理でしたが、それなりにうまくいったようです。

文献や、今回の結果を踏まえると、イシガメの孵化までの積算温度(温度X日数)は、だいたい1,400℃位じゃないかな?と思っています。

番号③「デカ子」の2クラッチ目、6月27日に産み落とされた卵については、産卵1ヶ月後に掘り出して半々に分け、それぞれ高温管理と低温管理を行いました。結果、どちらも孵化まで53日以上かかりました。この理由については、

  • 卵の成長が温度の影響を受けるのは、成長ステージの序盤から中盤まで。
  • この時の卵は、土中にあった1ヶ月の間に低温の状態である程度のステージまで成長。
  • 卵の成長ステージの終盤は、温度の影響を受けにくい。

辺りだと思われます。
文献によると、カメの性別が温度の影響を受けるのは、成長ステージの中盤との事。このため、この時の卵は全てオスになるんじゃないかな、と考えています。

孵化までの日数を基準に、50日以上をオス、49日以下をメスと予想して、別々に飼育を始めています。予想が正しいのかどうか、結果がわかるのは、しばらく先になりそうです。

オス用とメス用、2つの子ガメハウスを用意しました。

イシガメは、産卵から子ガメが這い出すまで、標準で70日程度(積算温度約2,000℃)とのこと。孵化後、地表まで掘り進んで這い出すまでに、結構時間がかかるみたいですね。

ちなみに、カメの孵化時期については、クサガメはこちら、イシガメはこちらの資料が参考になります。そのほか、カメの這い出しについてはこちらにも記載があります。

繁殖1年目を終えた感想

予想以上に殖えるな~、というのが率直な感想です。
これだけ確実に孵化できる仕組みになっているのに、自然界ではほとんど生き残ることができないのですから、やっぱり「自然は厳しい」ということなのでしょう。

ニホンイシガメについては、クサガメとの交雑が問題とされていて、人によっては、純血のニホンイシガメかどうかを、かなり気にされるようです。(参考文献はこちらこちら

実際に自分で繁殖を経験してみて感じたのは、「子ガメの甲羅の形には、かなり個体差がある。」ということ。丸い甲羅、お尻側が広がった甲羅、縦長の甲羅など様々ですが、なんとなく、元の卵の形や大きさ、卵の中の栄養分の量など、言い換えれば、母親の年齢や体格、栄養状態などにも影響されるように感じました。

もちろん遺伝に影響されることは、当然だと思いますが。

私が子どもの頃にガチャガチャで買ったスーパーカー消しゴムは、カプセルの形や消しゴム自体の大きさの影響で、形状にクセがついたりしました。もしかしたら、カメの甲羅についても、同じようなことが起こるのかもしれません。

生まれたての子ガメの甲羅は、卵の形に湾曲しています。

外見上、明らかにイシガメとクサガメの雑種だと思われる個体は確かにいて、私自身も見たことはあるのですが、個体差や地域差がある中で、外見上「これは純血のイシガメだ」と断定することは難しいように感じます。また、遺伝子の分野においても、純血のイシガメを100%見分けられるほどには、研究は進んでいないように思います。(遺伝子関連の参考資料はこちら

そんなこともあって、私自身、うちのイシガメについて、純血か否かを断定できるとは思っていません。

なお、ある文献によると、外見上イシガメとクサガメの雑種と疑われる個体から生まれた卵は、孵化率が低かったとのことです(孵化したのは11クラッチ78個中4クラッチ14個のみ。クラッチごとの孵化率14~88%)。この報告を踏まえて、私はうちのイシガメに関して「孵化率に影響が出るタイプの雑種」ではなさそうだ、とは思っています。

もちろん「孵化率100%だから純血」とはいえません。なにしろ「孵化率88%の雑種」がいるのですから・・・。

イシガメの甲羅の色は様々で、「ハイイエロー」など発色がきれいな個体が人気です。
イシガメの甲羅の発色の仕組みについては、あまり研究されていないようです。とはいえ、やはり遺伝の影響は受けるでしょうから、綺麗なイシガメからは、綺麗な子ガメが生まれやすいのでしょう。うちの地味なイシガメから生まれた子ガメ達は、やっぱり地味な子ばかりです。

でもそんな中、少し変わった色の子も生まれています。
甲羅のフチの部分だけ色が濃かったり、

逆にフチの部分の色が薄かったり。

繁殖1年目の私には、これが珍しい事なのかどうなのかさえも、よくわかりません。
ただ、このような配色の子ガメは、産卵後、自然の状態でしばらく放置し、その後掘り出して、冷温庫での管理に切り替えた場合に生まれています。産卵直後から冷温庫で一定の温度管理を行った卵からは生まれていません。もしかしたら甲羅の色は、卵の周辺の環境(温度?)に、何らかの影響を受けるのかもしれません。

いずれにしても、まだ経験が少なすぎて、なんともいえませんが。

一言でまとめると

色々と書き連ねましたが、イシガメ繁殖の一年目を一言でまとめると、

「子ガメがたくさんいると嬉しい。でも繁殖は結構大変。」

って感じです。特に個別飼育がしんどかった・・・。毎朝4時半に起きて水換えしたり。くたびれて眠くなり、このブログの更新も滞ってしまいました・・・とはいえ、また来年も頑張るんですけどね。

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